「姫、何があった?」

俺は静かに聞いた。

「………うちの友達が見たんです。
うちの彼氏が他の女の人とデートしてるとこ。
その子が問い詰めたら、現地妻やて、
ゆうてたらしくて。」

「俺は、姫の彼氏とは違うから、何を
考えてるのかは分からないけど、分かる事が
1つだけある。」

「なんです?」

「姫は、そいつと別れた方がいい。」

姫の瞳が揺れる。

「高校生から付き合ってたって事は、姫の
初めての男なんだろ。
だから、特別に感じるだけで、他にもいい男は
いっぱいいる。
姫は美人だし、明るくて元気でかわいいから、
これからもっといい男がいくらでも現れるよ。
そんな奴に固執する必要はない。」

「そんな事は、分かってるんです。
せやけど、簡単に割り切れへんから、
困ってるんです。」

「それも分かるけど、続ける意味はないと
思うぞ?
まあ、俺が言う事じゃないけどな。」

「………いえ、聞いてくれて、
ありがとうございました。
昨日から溜め込んでたものを吐き出せて、
ちょっと楽になりました。」

そう言って、姫は赤い目で笑った。

「じゃあ、ここ、1時間取ってあるから、
落ち着くまでここにいていいぞ。」

俺はそう言って、姫を1人会議室に残して席に戻った。