俺は、姫にシャワーを浴びさせてやろうと思って、やめた。

昨夜、ブカブカのジャージを着た姫を見た時も後悔したんだ。

こんなかわいい姿、春山に見せるんじゃなかったって。

湯上がりの姫なんて、俺以外の奴に絶対に見せちゃダメだろ。

だけど、まさか、その会話を春山に聞かれてるとは思わなかった。

気まずい…

そう思ってたら、姫が突然、
「あとにします!」
って抱きついて、とっても嬉しそうにニコニコと飛び起きていった。

それからしばらく、俺の心臓はバクバクと大きな音を立てて鳴っていた。

だけど、さっきの姫、すっごくかわいかった。

吉田が言ってた、姫の目が『課長大好き』って言ってるっていうのが、分かった気がした。



今日の春山は、余計な事を全然言わないで、ただ微笑んで見守ってくれてた気がする。

姫と2人で味噌汁を作ってる時も、何も口を挟まず、ただ笑って見ていた。

奴なりに気を遣ってくれてたんだろうか。



俺は春山を見送ったあと、不意に思い立って姫にクローゼットを使わせる事にした。

夏、姫を寝かせられなかったベッド。

昨日は平気だった。

むしろ、姫と目覚めた今朝は、とても幸せだった。

思わず、もう一度抱きしめたくなるほどに。


春山はこの部屋で告れって言ってた。

だけど、まだ、気付いたばかりの自分の気持ちに自信が持てない。

だから、もう少し、確信が持てるようになったら、姫にちゃんと言おう。

それが、いつになるかは、分からないけど。