残念な王子とお節介な姫

「何々? 吉田、詳しく話せよ。」

春山が興味深々で身を乗り出す。

「夏に俺が子連れで出かけたら、2人でデート
しててん。
邪魔しちゃ悪い思って、声掛けへんかった
けど。」

吉田は3年前に結婚して、2歳になる子供がいる。

「いや、あれは違うんだよ。」

「違うて何が?
2人で仲良く犬の背中に乗って、空飛んでた
やろ。」

「へぇー」

春山がニヤニヤしている。

「8月31日だろ?
結婚式するはずの日だったから、姫が気を
遣って連れ出してくれたんだよ。」

これで納得してくれると思ったのに、2人は全然納得しなかった。

「そんな事で、ただの部下が上司を誘うか?」

春山があり得ないとばかりに言う。

「姫がお節介なんだよ。
あいつも俺の少し前に失恋してるから、似た
境遇の俺をほっとけなかったんじゃないか?」