なのに…

「そんな事は、知ってますよ。
知ってるのに、手なんか繋ぐから、悪いんや
ないですか。」

そうだよな。
散々、結の話をしてきたんだ。
知らない訳がない。

「悪かった。
もうしないから。」

俺がそう言うと、

「え?」

と姫は固まって、

「いや、それは…」

と口ごもる。

なんだ?
俺に手を繋がれたのが嫌だったんじゃないのか?

若い子の考える事は、訳が分からない。

だけど…
くすっ
表情をくるくると変える姫は、見てて飽きない。

「さ、帰るぞ。
明日は、一緒に買い物に行くから、俺が
行くまで、買い物禁止な。」

俺は、そう言って、先に立って歩き始めた。

姫は後ろから、慌ててついてくる。

くくっ
カルガモの雛みたい。
かわいい。