怒る私の手を仁くんがそっと握った。

「分かりました。
夕方までに送り届けます。」

仁くんはそう言って、天くんを真っ直ぐに見た。

天くんは、それ以上、何も言わなかった。

「絆、がんばれ!」

晃くんが親指を立てて、ニッと笑う。

「ぷっ
大学に挨拶に行くだけよ。
何をがんばるのよ。」

「父さんに負けるなって事。」

「ふふっ
ありがと。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

結ちゃんが、手を振って見送ってくれた。


私は仁くんに手を引かれて家を出る。

門の前には、国産のファミリータイプのミニバン。

「仁くん、これ、どうしたの?」

「親父のを借りてきた。」

「部長、大丈夫なの?」

「うん。
今日は出掛けないって言ってたから。」

仁くんが助手席のドアを開けてくれる。

「ありがとう。」