天くんは無言だ。

そこへ、春山部長がやってきた。

「仁、帰るぞ。」

仁くんは、天くんと春山部長を交互に見比べる。

「仁、8年の空白は一晩じゃ取り戻せない。
焦るな。
今日は帰って、また出直せ。
ピアノと一緒だ。
大切な事こそ、時間をかけてじっくり
取り組め。」

ふぅぅ…

仁くんはため息をひとつ吐いて、

「絆、今日は、会えて嬉しかった。
ピアノも一緒に弾けて、楽しかった。
また明日、迎えに行くよ。」

と微笑んでくれた。

「うん。
私も楽しかった。
仁くん、またね。」

私は仁くんに手を振る。

仁くんは軽く手を挙げて、春山部長と去って行った。