あいつ、栗原は、実の両親が、遠距離恋愛の結果、別れたから、遠距離はダメだと、うちの息子を振ったらしい。

そんなの、遠距離でもうまくいくカップルもいれば、近くにいたって壊れるカップルもいる。

そんな簡単な事が、なんで分からないんだ。

俺の息子は、ちょっとは名の知れたピアニストだ。

だから、ちょっとした失恋で終わるものも、週刊誌の記事になってしまう。

俺は、出版前に送られてきたその記事のコピーを専務に見せた。

その上で、言う。

「お前、栗原がなんて言って仁を振ったか、
知ってるか?」

「いや。
そもそも、ほんとに絆が仁を振ったのか?」

「仁が言うには、遠距離がダメなんだと。
自分の両親が遠距離で別れたから、
遠距離恋愛だけはしたくないそうだ。」

専務は絶句した。