明け方、絆がそっと俺の隣からいなくなる。

静かに準備をして、パタンとドアが閉まり、絆の気配が消えた。

起き上がってみると、残ってたのは、俺が贈った指輪だけ。

絆…

俺は感情の制御ができなかった。

リハから泣き続け、本番はプロとして涙を堪えて演奏していたけど、『絆』では恥ずかしいくらい涙が零れた。

それから、毎ステージ、涙を零した。

ステージを下りると、ずっと泣くか寝るか叫ぶか、マネージャーも手がつけられない状態が続いた。

俺は、ピアニストとしても人としても終わったと思った。

そんな俺の様子は、スタッフがいくら隠してもどこかから漏れるもので、雑誌やネットで取り上げられるようになった。

それでもいいと思った。

ピアニストとしてやっていけなくなれば、俺は日本にいられる。

そしたら、絆のそばにいられる。

そう思ってた。