「私の夢は、お母さんみたいなお母さん。」

みんながポカンとした顔をする中、結ちゃんだけが頷いていた。

「絆はお姉ちゃんに、愛情いっぱいに
育てられたもんね。」

「うん。」

「でも、ピアノを職業にしながらでも、
お母さんはできるだろ?」

と星くん。

「そうしてる人もいるけど、例えば、
ピアノバーのピアニストは、夜のお仕事
でしょ?
ピアノ教室の先生も子供が学校から帰って
きてからがお仕事の時間だし。
私は、子供が帰ってきたら、できるだけ家で
迎えてあげたいの。
宿題をやる姿を目の端に止めながら、
お料理したり、お掃除したりしたいの。」

「へぇ。
女って、そんな事考えるんだ。
自分の夢より家族って事?」

星くんが不思議そうな顔をする。