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誕生日

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翌朝5時。

仁くんの隣からそっと抜け出す。

静かに身支度を整えて、最後に、小指から指輪を抜き取った。

それをテーブルの上に置いて、部屋を出る。

ふふっ
結局、クリスマスプレゼント、欲しかった仁くんのじゃなくて、章吾さんのが残ってる。
変なの。

フロントでタクシーを呼んでもらい、空港へ向かう。

帰りはエコノミー。

「ただいま。」

と家に帰り、そのまま自室に籠る。

昼になり、結ちゃんが呼ぶ。

何事もなかったかのように昼食を取り、ピアノの前に座る。

ピアノを見ると仁くんを思い出すけど、私はピアノ以外に自分の感情の吐き出し方を知らない。


ショパン『別れの曲』

綺麗な旋律

なんで別れなのに長調なの?

余計に切ないよ。

仁くん…



私は、日が暮れるまでピアノを弾き続けた。

こんなに弾いたのは、大学を卒業して以来だ。