その時、マナーモードのスマホが振動した。

『絆、今、どこ?
俺は、今、埼玉のコンサートが終わって東京に
戻るところ。』

「絆さん?
春山さんからですか?
返信していいですよ。」

章吾さんは相変わらず優しく微笑む。

私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、返信する。

『今、会社近くのジャズバーにいるよ。
仁くん、コンサート、お疲れ様。』

『誰と?』

なんて返そう。

私は思わず章吾さんを見た。

章吾さんは、それだけで察したように、

「バカな男に交際を申し込まれたから、
断ってたって言うといいですよ。
嘘じゃありませんし。」

と助言してくれた。

私はそのまま返信する。

『桐生さんにお断りをしてた。』

『今から迎えに行く。
そのまま、そこにいて。』