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名古屋にて

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「絆、晩ご飯食べた?」

仁くんが腕を緩めて聞く。

「ううん。」

私が首を振ると、

「じゃ、食べに行こ。
ホテルにチェックインして荷物だけ置いて
くるから、ついて来て。」

と仁くんは、私の手を取って歩き出した。

そして、絡めた指を眺めて、

「指輪してくれてるんだな。
よく似合ってる。
ありがとう。」

と嬉しそうに目を細めた。


仁くんは駅上のホテルに入り、チェックインの手続きを済ませる。

すると、ロビーでざわざわ、ひそひそと仁くんを指差す人たちがいた。


そっか。
仁くん、もう有名人なんだ。

仁くんに再会して、今まで通りのつもりでいたけど、もうあの頃の仁くんとは違うんだ。

なんだか、仁くんを遠くに感じる。


「絆、ごめん。
ルームサービスでもいい?」

仁くんは、エレベーターに向かいながら、申し訳なさそうに言う。

「いいよ。
仁くん、有名人だもん。
仕方ないよね。」