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私の家族

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11月最後の土曜の今日、私、栗原絆(くりはら きずな)は、1ヶ月前から付き合ってる彼と待ち合わせている。

彼の行きつけの喫茶店。

大きな窓ガラス越しに、はらはらと舞い落ちる色づいた銀杏の葉を眺めながら、私は、香りのいいダージリンにミルクを入れて静かに混ぜる。

14時。

時間通りに彼はやってきた。

私は微笑んで手を振る。

だけど、彼はにこりともしない。

嫌な予感がする。

この感じ、半年前にも経験した。

「絆(きずな)、別れて欲しいんだ。」

………やっぱり。

「なんで?」

「昨日、小川本部長と話す機会があってね。
君は本部長にとっても専務にとっても微妙な
存在らしいじゃないか。
だから、ごめん。」

「どういうこと?
専務も本部長も
私たちには関係ないじゃない。」

「君には関係ないかもしれないけど、
俺には関係あるんだ。」

「なんで?
私、最初に言ったよね?
私と付き合っても出世はできないよって。」

「そんなの、付き合っても出世できないけど、
結婚すればできると思うじゃないか。
まさか、取締役2人から疎まれてる娘だなんて
思わなかったよ。」

「よくそんな酷いこと、
面と向かって言えるわね。
つまり、私と付き合ったのは出世のためで、
私が好きなわけじゃなかったって事?」

「いや、もちろん、絆の事は好きだったよ。
綺麗だし、美人だし。」

………過去形。
しかも、薄っぺらな理由。

「分かった。
もういいよ。
さようなら。」

私はそのまま席を立った。

こんな酷いこと言われたんだもん。
お茶代くらい奢ってもらってもバチは当たらないでしょ。