「あ、昼休み。暁に呼ばれてるから行ってくるね」


「おう。御曹司によろしく」



片手を上げた音哉に手を振って、あたしは部署を出る。



「三日ぶりなんだよな」



思わぬトラブルのせいで帰る日が遅くなってしまったから、こんなに暁に会わないのは彼が海外に試験の勉強をしに行っいた時以来。

久しぶりに会う暁を思い浮かべて、ニヤニヤしそうな頬をパンっと叩いて歩こうとすると、聞き覚えのある声が耳に入る。



「それは、違いますよ」



たったそれだけの言葉だけど、それが誰の言葉なんて顔を見なくてもわかる。



「でも、よく目撃されてるわよ?あなたと茅ヶ崎さんが歩いてるところ。だから最近じゃあ、結婚したのは茅ヶ崎さんじゃないかって」


「そんなわけないでしょう。結婚式きましたよね?」



暁と話しているのは秘書課の千種さん。

結婚式というのは、カモフラージュで彼のお父さんが雇ったモデルの女の子をつかってしたもの。