家庭訪問は恋の始まり

すると、瀬崎さんがドアを閉めてくれる。

運転席に乗り込んだ瀬崎さんは、エンジンをかけて、意外にも静かに走り出す。

「嘉人がね、スポーツカーが好きなんですよ。
スポーツカーなんて、燃費も悪いし、小回りは
利かないし、いいところなんて全然ないから
買うつもりはなかったんですけど、知り合いの
ディーラーがハイブリッド車があると言って
カタログを持ってきましてね。
嘉人が喜ぶならとこんな車を買って
しまいました。
親バカでしょ?」

瀬崎さんは、自嘲する。

でも、嘉人くんをかわいがる瀬崎さんは、とても素敵に思える。

「先生、とりあえず、うちで構いませんか?
後でご自宅にお送りしますから。」

「はい。」

なんだろう。

ドキドキする。

こんなすごい車に乗ってるからかな。

私は、こっそり瀬崎さんを見る。

前方を見ながらも、リラックスして運転している姿が、なんだか大人の男な気がした。