それを聞いた瞬間に、嘉人くんの目がキラキラした。

「うん!!
僕、トイレ行って、服脱いで待ってる!」

嘉人くんは、そう言うなり、トイレに駆け出して行った。

「じゃ、先生、長々とお引止めして、
申し訳ありませんでした。」

お父さんが、頭を下げる。

「いえ、お邪魔しました。」

私も混乱する頭を下げて、玄関を出た。

すると、お父さんも本当に玄関を出て見送りに来てくれた。

「先生、嘉人が失礼な事ばかり言って、
すみません。
忘れていただいて構いませんから。」

ああ、そういう事…

そうだよね。本気な訳ない。

嘉人くんを納得させるために、話に乗ったふりをしただけ。

「はい。
今日は、本当にご馳走さまでした。
とてもおいしかったです。」

私は頭を下げて、車に乗り、家路に就いた。



はぁ…

お父さんが本気じゃないのは、当たり前じゃない。

分かってるのに、なんで、私の胸はこんなに苦しいんだろう。

なんで、こんなに視界が滲むんだろう。

なんで…