家庭訪問は恋の始まり

「いえいえ、それはご迷惑だと思いますので、
時間を改めて出直します。」

私が断ると、

「いえ、嘉人にご飯を食べさせたら、風呂にも
入れなきゃいけませんし、時間がないんです。
申し訳ありませんが、一緒に食べながら
お話を聞かせてください。
先生の分も用意してありますし、嘉人も
先生との晩御飯を楽しみにしてましたから。」

そう言われると、断りにくい。

今から、食事をしてお風呂に入れて寝かせて、その後に私がお邪魔するのは、また違った意味で非常識だ。

「では、お言葉に甘えて…」


私が嘉人くんに手を引かれて、ダイニングに入ると、お父さんはカウンターの向こうのキッチンに向かった。

「嘉人、テーブル拭け。」

「うん!」

お父さんは、絞った布巾を嘉人くんに投げる。

嘉人くんは、それを上手にキャッチしてテーブルを拭く。

なんだかあたたかい親子関係を垣間見た気がして、心がほっこりする。