「逃げてる。
拓哉(たくや)さんが追いかけてるけど、
捕まらなくて。」

「どこで? 運動場?」

「うん。」

「分かった。ありがとう。」

私は、それだけ言うと、靴を履き替えて運動場へ出た。

嘉人くんは、駆けっこが早い。
同じ1年生では、捕まらないし、万が一捕まえても、また手を上げないとも限らない。

私は運動場を見回す。

鬼ごっこをしてる子、ドッジボールをしてる子、いろいろいる中で、全力で走る嘉人くんを見つけた。

ま、あれだけ走った後なら、大丈夫でしょ。

私は走る。

子供の頃から、私も駆けっこは得意だった。

拓哉くんから逃げる嘉人さんの前に回り込んで挟み撃ちにして、あっという間に捕まえた。

私は、嘉人さんの手首を握って、校舎へ引きずっていく。

「離して! やだ! 離せって! 離せ!」

嘉人くんは暴れるが、私は絶対に手を離さない。