「君は、きっとこれからもイライラしたら、
嘉人に手を上げるだろ。
俺たちの夫婦関係は、もうずっと前に
終わってる。
だったら、ここで、けじめをつけよう。」

妻の目から涙がこぼれた。

「なんで? いやよ。
もう、絶対嘉人を叩かないから、
お願いだから、そんな事言わないで。」

俺は、書斎の机から、随分前に興信所から受け取った報告書を持ってきた。

目の前に証拠写真を並べられても、妻は首を振り続けた。

「違うの。
私が好きなのは、てんちゃんだけなの。
私がこんなに好きなのに、てんちゃんは、
本社に行ってから、仕事ばっかりでちっとも
構ってくれないから、寂しかったの。
女だって、溜まるのよ。
我慢できなかったの。
体だけの割り切った関係なら、
問題ないと思って。
気持ちは動いてないんだから、
浮気じゃないでしょ。
言ってみれば、浮体よ。」