嘉人が2階に上がったのを見届けて、俺は話を再開する。

「注意するのに、
手を上げる必要はないだろ。」

「言っても聞かないんだから、
仕方ないじゃない。」

妻は開き直る。

「今までにも、手を上げたことあるんだろ。」

「たまによ。毎日じゃないわ。」

毎日じゃなきゃ、手を上げてもいいと思ってるって事か。

「前に、児童相談所が聞き取りに来ただろ。
あの時も、本当は手を上げてたんだな?」

妻は、目を伏せて答えない。

「病院でも言われただろ。
ADHDは、衝動的に手が出やすいって。
君もなんだな?」

やはり妻は黙ったまま。

俺は、帰りの車で決意した事を告げる。

「俺たち、別れよう。」

妻は、焦ったように顔を上げた。

その表情に不安の色が滲む。

「なんで…?」