「あれ。」

嘉人は、棚に並んだミニカーを指差す。

スポーツカー好きの嘉人は、一度にたくさんのミニカーを走らせたがる。

きっと昨日も床一面にミニカーを並べたんだろう。

「そうか。
じゃあ、昨日は誰とミニカーで遊んだ?」

嘉人は、なんでそんな事を聞くのか分からないというように、首を傾げて、

「1人だよ。」

と答える。

「昨日は、誰も遊びに来なかったのか?」

「うん。」

「おじいちゃんやおばあちゃんも?」

「うん。」

これでもう言い逃れはできないだろう。

俺は、母親の方を向く。

「昨日、嘉人を叱ったのは、君だろ。」

妻は、キッと顔を上げて俺を睨んだ。

「そうよ。嘉人が何度言っても
片付けないから、注意したの。」

俺は、一旦、話を切った。

「嘉人、もう遅いから、寝ておいで。
今日は、パパとママで少し話があるから、
一人でベッドに行けるな?」

嘉人は、頷いて、「おやすみなさい」と2階へ上がっていった。