「分かった。
嘉人、『はい』か『いいえ』で答えろ。」

嘉人は頷く。

「このあざは、転んでできたのか?」

「ううん。」

「じゃあ、このあざは、ぶつけて
できたのか?」

「ううん。」

「じゃあ、このあざは、けんかして
できたのか?」

「ううん。」

「じゃあ、このあざは、叱られてできたのか?」

「うん。」

嘉人は、『叩かれた』ではなく、『叱られた』という表現なら素直に認めた。

「そうか。
どんな悪い事したんだ?」

「おもちゃを片付けなかったの。」

母親の話を避けたら、ようやく嘉人は話し始めた。

「そうか。それはダメだな。
遊んだら、片付けるって、
前に約束したもんな。」

「うん。」

「じゃあ、誰に叱られたんだ?」

途端に嘉人はおし黙る。

上目遣いに母親の顔色を伺う。

俺は、質問を変えた。

「片付けなかったおもちゃって、どれ?」