瀬崎さんは、私の隣に座ると、嘉人くんに声を掛ける。

「嘉人もそこへ座れ。」

戸惑った嘉人くんが私と瀬崎さんを交互に見比べる。

「あ、いいの、そのままで。
嘉人さん、私のお願い、聞いてくれるかな?」

私は、あえて、嘉人くんをそのままに話を始める。

「あのね、お正月に先生の家に遊びに来た
でしょ?
その時、どんなお話をしたか、覚えてる?」

「美晴ちゃんとお絵描きして、縄跳びした。」

嘉人くんにいつもの元気はない。

嘉人くんは、長年、お母さんの顔色を伺いながら、生きてきた。

今日みたいに、予期せぬ事が起これば、距離をとって様子を伺うのはある意味、仕方がない事なのかもしれない。

「そうだね。
先生ね、嘉人さんにお願いがあるの。
先生、嘉人さんのお父さんのお嫁さんに
なってもいいかな。」

嘉人くんは、私の一言一句を噛みしめるように聞く。