「よかった。
昨日は、自分で自分が止められなくて、夕凪に
嫌われたんじゃないかと心配してたんだ。」

瀬崎さんが私の手を握る。

「夕凪、今夜も泊まっていい?」

私は嬉しいけど…

「嘉人くんは?
毎晩お父さんがいなくて、寂しがらない?」

「大丈夫。
今朝、様子を見に行ったら、少ししょんぼりは
してたけど、暴れたり取り乱したりする程
ではなくなってたし、もともと、長期休暇は
実家に泊まる事が多かったんだ。」

もともと?
それって…

「お母さんがいる時から?」

「うん。
今、思えば、嘉人が実家に行きたがったのは、
あいつの暴力から逃げたかったのかも
しれない。
実家の両親も嘉人に会いたがったし、母親は
若くして結婚したから、周りの友人がまだ
独身で遊んでるのを羨ましがって、嘉人を
預けて、夜遊びを繰り返してた。」