家庭訪問は恋の始まり

私が言うと、瀬崎さんが補足する。

「実は、嘉人はADHDという発達障害を
抱えてるんです。
それに気づいて対処を教えてくださったのも
夕凪先生で、保育園の頃から先生の手に
負えなくて、ずっと先生からも無視され続けた
嘉人と、初めて正面から向き合ってくださった
のも、夕凪先生なんです。
嘉人にもそれは伝わったようで、最初に
プロポーズしたのは嘉人なんです。
『僕のママになって。』嘉人が夕凪先生にそう
言ったのは、前妻との離婚が成立する前
でした。」

「ふぅ…」

母はため息をひとつ吐くと、私を見て言った。

「でも、夕凪、あなた春には異動でしょ?
こっちに帰ってくるんじゃなかったの?」

「えっ!?」

瀬崎さんが驚いて私を見る。

「お母さん!!」

私は慌てて母を制したが、言ってしまったものは元には戻せない。