「じゃあ、ついでに嘉人の事も話して
おこうかな。
これで終わると、誰かに何か聞かれた時、
正直者の夕凪が困るでしょ?」

瀬崎さんはそう言うと、私の頭を撫でる。

もうダメ。

ドキドキが止まらない。

「夕凪は、嘉人が通級に通い始めて、
変わったと思う?
通級は、授業を受けるより、嘉人にとって
有益だと思う?」

話題が嘉人くんの事になり、私は必死に、どこかへ隠れていた教師の顔を引っ張り出す。

「瀬崎さんは、今日、初めて授業を参観されて
どう思いました?」

「楽しそうに頑張ってましたね。」

「以前の嘉人くんなら、自分の出番は
頑張っても、お友達の出番の間は、手遊びを
したり、立ち歩いたり、お喋りをしたりと
落ち着きませんでした。
でも、今日は、お友達の発表をちゃんと
聞けました。
授業に集中する事ができるようになって
きてると思います。」