「ごめん。ただの独り言。
忘れて。」

瀬崎さんは私の手を離して、車を降り、助手席のドアを開けてくれた。

「送っていただいて、
ありがとうございました。」

私はお礼を言って頭を下げる。

「部屋まで送るよ。」

そう言って、瀬崎さんは、私の手を取った。

部屋まで…と言っても、ほんの10mちょっとの距離。

それすら離れがたいと思ってくれるその気持ちが嬉しかった。

私が部屋の鍵を開けると、

「ちょっとだけ、いい?」

そう言って、瀬崎さんは私の部屋のドアを開け、一緒に玄関に入る。

ドアが閉まるや否や、瀬崎さんの逞しい腕に抱きしめられた。

「夕凪、愛してる。」

そう囁いた瀬崎さんは、腕を緩めて唇を重ねた。

私は背中を壁に押し当てられ、少し屈んだ瀬崎さんに唇を啄ばまれる。

そのまま深くなるくちづけ。

私は、瀬崎さんの背中にしがみつくように腕を回した。