アパートの駐車場に着いた。

私が、降りようとシートベルトを外すと、隣からまた瀬崎さんの手が伸びて、私の手を握った。

「夕凪、今日はありがとう。
俺と嘉人のわがままに付き合ってくれて。」

「いえ。」

私は、目を伏せる。

すると目に入る私の手と一回り大きな瀬崎さんの手。

「また、電話する。」

「はい。」

これで今日はさよならだと思うのに、瀬崎さんの手がなかなか離れない。

どうして?

ドキドキする胸に戸惑いながら、私は瀬崎さんの手を見つめる。

しばらくして、瀬崎さんは握った私の手を引き寄せた。

そのまま私の手を持ち上げて…

手の甲に柔らかな感触が温もりを落とした。

「このまま、連れて帰りたい。」

瀬崎さんが苦しそうに呟く。

「……… 」

私も一緒にいたい。

だけど、私は嘉人くんの担任。

感情に流される訳にはいかない。