家庭訪問は恋の始まり

だけど、武先生はにっこり笑って、

「夕凪先生のそばにいたいんだ。
ひとりで待ってろ、なんて寂しい事、
言わないでくれる?」

これは、なんて返せばいいの?

私が困っていたら、どこかから、私を呼ぶ聞き覚えのある声。

「夕凪せんせぇ〜!!」

振り返ると、大きく手を振り、駆けてくる嘉人くん。

「嘉人さん!
どうしたの!?」

私は、しゃがんで嘉人くんと視線を合わせる。

「宿題がんばったから、夏休み最後にパパが
映画に連れてきてくれたの。
夕凪先生は?」

「先生も映画、見たいなぁと思って。
嘉人さんは、何を見るの?」

「あれ!!」

嘉人くんが指差したのは、私たちと同じ映画。

「こんにちは。」

瀬崎さんが、嘉人くんから少し遅れてやってきた。

「偶然ですね。
デートですか?」

サラッと爽やかに尋ねるけど、これ、絶対、偶然じゃないよね!?