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「うわ!?」

小さく悲鳴をあげる。


涙を拭いて、目を開けると、世界がななめに傾いていた。


しかも、もう夜の屋上ではなく、隣の県の遊園地だった。


急な変化には驚いたが、なんとなくタイミングがつかめてきた。

ここも、思い出の場所。

こんなに、傾いてなかったけど。

建物も人も、地面からななめになっている。


私だけが、まっすぐ。

こうなると、私の方が異常なんだろうな。


ななめなことはさておいて、この遊園地には、よく来た。


あいつの手を引っ張って、アトラクションからアトラクションへと走った。


あいつの頭で15周年限定のうさぎの耳が揺れる、
手を引っ張るわたしの頭には、ねこのキャラクターがちょこんと座っている。

あいつの手には、回り方をメモしたノートが握りしめられている。



ふたりで、一番いい回り方を話し合った。

アトラクションの順番、パレードはいつ見るか、ご飯はどうするか、予算は、ルートは、お土産かで悩んだ。


話し合って、食い違って、じゃれあって、押し倒されて、


あの時の、あいつの顔、向こうの天井、空気の流れ、唇に残った感触。

全部覚えている。


恥ずかしくて死にそうで、
嬉しくて爆発しそうで、
幸せすぎて溺れそうで、

涙が出そうだったから、
照れ隠しに「ムードがないっ!」て、怒った。



大切な思い出。

心の中で、変わらずに輝き続けている。

思い出す度に、わたしの心をあたためてくれる。















今のわたしの不幸は、

あの時、幸せだったから。




たぶん、そうだ。



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