「か、川澄くんだから、いいよって言いそうになっちゃった」
そういう井上さんは、今度は頬までピンク色に染めて、そんな反応されると勘違いしちゃうから。
しかも、え、今なんて?
川澄くんだから?いいよって?
「何だそれ」
「だって、ずっと嫌われてるのかもって思ってたから。だから、触りたいって、つい、嬉しくなっちゃって」
過去の僕死んでくれ。
「嫌いじゃないからっ。むしろ──────」
必死に否定して、ちゃんと彼女の顔を見た瞬間。
周りの音が全部聞こえなくなって、
彼女の瞬きがスローモーションに見えて。
こんなに綺麗な生き物、知らないって思った。
「っ、触っていいの?」
僕の中の一番優しいと思う声でそう聞くと、
井上さんは、俯いてからコクンと頷いた。
「っ、じゃあ、失礼します」
「へへっ、どうぞ」
井上さんの毛先が今日も
「こういうの、川澄くん、だけだよ」
っ?!
さらに、僕をおかしくさせた。
────end────



