20分くらいしたら、立石先生は元気な明るい声を発し、やや興奮気味に帰ってきた。

「ただいまですーいろいろ買って来たんでー好きな物どうぞ!」
満面の笑みで、私に話しかけてくる。


「ありがとう。いくらだった?」

「いや、いいです。これくらいご馳走しますよ」
立石先生は、手を思いっきり左右に振りながら答えた。


「大丈夫、塾の経費で落とすょ」

「レシートないから、すみません」
ニヤリと笑いながら言う立石先生。


「…ん…わかった、今日は遠慮なく頂きます。」
私は立石先生の熱意に負けてしまった。

「何食べます?」

「あーとりあえず、おにぎり」

「はい、あ、あと、ビールと、チューハイ飲みます?飲みましょうよ」

「あーまだ仕事中だし、それにビールは飲めないんだ」
また、ニヤリとし、ハイテンションな立石先生。

「このチューハイなら、多分大丈夫、飲みやすいですよ」


「そう?じゃあ、ちょっとだけ…………ああ、やっぱりダメダメ、塾長に怒られちゃうよ」

すっかり流されてしまっていたが、翔太郎のことを急に考え始めた。

何してるんだ私は……


「おにぎりだけ、頂くよ。梅ある?」
私は立石先生の顔色をうかがう。

「わっかりました、あります!」
ちょっとだけ、寂しそうにしたが、すぐにお茶目な笑顔を取り戻してくれた。


「じゃあ、俺は鮭にしよ」


「いただきますー」
2人とも、両手を合わせてハモるかのように言った。


パクッ

バクッ

「美味い!」

「うん、仕事後には最高だね」
私は、初めての体験だった。
授業後、一講師と塾内で、ご飯を食べるなんて……