エレベーターの扉が開いた。
目の前には真っ赤なバラが見事に飾られていた。あまりの美しさにため息がもれてくる。

「いらっしゃいませ」
薔薇の花言葉『愛情』『情熱』……それに負けないくらいの素敵な笑顔のホテルマン。

「3名様で予約の樋口様ですね」

「え?」
私はすぐさま、翔太郎を見て、手を握り返す。
どういうこと?の合図のつもりだった。

でも、翔太郎は私に大丈夫とでも言っているかのように、微笑んだ。

私は、トイレがないか、辺りを必死で見回した。

見つけたーよかったー

「ごめんなさい、先に化粧室行ってきてよい?」
そう言うと、心の動揺を隠しながら押さえつけながら、私はトイレへ向かった。