私は深夜、朝になるかも…と言う翔太郎のメモ書きのことを考えながら、夜ご飯の準備をし始めた。

すぐに温めて食べれるように、メニューはポトフに決めた。
一晩中、煮込んで待っていられる。


野菜を大きめにザクザク切り、ちょっといつもより、高級なウインナーを深い鍋にどっぷり入れた。




「クルミ、クルミ、ご飯だよ」
私は余ったキャベツを細かくちぎり、クルミを手のひらに大切に乗せて食べさせた。
クルミはいつになく嬉しそうだ。

きっといつもの翔太郎なら、俺がやる!そう言って飛んで来るだろう。
愛してやまないクルミに、私が嫉妬してしまうくらい、たっぷりの癒しを求めて、体中にチュッチュッをするんだろう。





何時になったかな?


私はスマホを手に取り、画面を見る。
【1時13分】

LINEしても大丈夫かな?

LINEくらいいいよね?
一生懸命、自分に言い聞かせてみた。
よし。


『翔太郎、お疲れ様です。
昨日は本当にごめんなさい。反省してます。あったかいポトフ作りました。
気をつけて帰って来てね。待ってます。』


ゆっくり送信を押し、私はそのままスマホ画面に釘付けになった。
目の腫れがようやく引いた頃……


見てくれるかな?
気づいてくれるかな?


私は、まるで初恋の彼に初めてLINEした少女のように、切ない淡い気持ちでいっぱいになった。

好きな人に振り向いて欲しい。
私だけを見て欲しい。
愛して欲しい。


こんな気持ち、初めてで、新鮮でもあり、逆に辛くて不安で悲しくもあった。



私は目をつぶってスマホを握りしめていた。

そして、しばらくして、そっと怖々と目を開いた。


{既読}

その二文字が何よりも眩しく輝いて見えた。

やったぁ!

私はスマホを強く握りしめ、高鳴る鼓動がする胸元にスマホをあてた。
そして、その嬉しさは安堵感へと少しずつ変わっていった。

私はソファーに飛び乗り、横になって何度も、スマホ画面を見つめた。

{既読}

こんな嬉しいんだ。
返事はないのに、こんな嬉しいんだね。
ね、翔太郎、私は初めて知ったよ。
読んでくれてありがとう。


私は目をパチパチさせながら、翔太郎の帰りをじっと待った。