私はしぶしぶ2階へ再び上がった。

「おはよう、クルミ、ご飯だよ」
今日のクルミは私に、頑張って!と言ってるかのように力強く見上げた。


私は洗濯機を回し、掃除と片付けを始めた。

そして、寝室に再び入った。すると、翔太郎のベッド左側のクローゼットが半開きになっている事に気がついた。私は、掃除機をとめ、中を開けた。


バタバタドッシャーン


「わぁーあ、痛っ、やっちゃった」


上からダンボールがものすごい勢いで落ちてきた。

床には一面雑誌やら、新聞紙、会社設立時の資料などが散りばめられた。

「やば……ん?なにこれ?」


私は、少し黄色くなった長封筒に入った手紙らしきものを見つけた。

見ちゃったらまずいかな?

でも、気になる…

私は勇気をだして封筒の中に入っている白い便箋に手を伸ばした。
そして、ゆっくりと開いた。


『翔太郎、お父さんの会社が倒産してしまい、びっくりさせてごめんね。
実は、数年前から、お父さん体調が良くなくてね、でも、翔太郎には絶対言うなって頑張っていたんだよ。でも、限界が来てね、ついに会社経営出来なくなっちゃったの。あらゆるとこに頭を下げて、お父さん頑張ったんだけどね。ごめんね。
翔太郎、お父さんとお母さんはずっとあなたを見てるからね、応援してるからね。あなたは、素敵な奥さんを見つけて幸せな家庭を築いて、悔いのない人生を送ってね。

翔太郎、身体だけは大事にしてね。
最愛の息子へ 9月29日 母より』


私は体中が熱に侵されてるような身震いとまた真逆に背筋が凍る思いとごっちゃになり、わけがわからなくなった。


「9月29日って……亡くなった前日?」


「え?どういうこと?」


私は両手で頭を抑えた。顔を覆った。
私は読んでしまってよかったのだろうか?


い、いやまずい。
翔太郎は嫌がる!怒るよ…!

私は慌てて、ダンボールに綺麗に詰め直した。
何事も無かったように。