カーテンから次第に光がもれ、朝になってしまったことに私はようやく気づいた。

翔太郎はまだ寝ているのだろうか?

私は顔を洗い、鏡で見て確認した腫れた目をタオルで隠しながら、寝室をそっと再びノックした。

「翔太郎、おはよう、昨日はごめんなさい」


反応がない。あまりにも静かすぎる。

もしかして?

私は慌てて、寝室の扉を開けた。

翔太郎はやはりいなかった。


どこへ行ったんだろう?

私はバタバタと階段を降りて行った。



「翔太郎?翔太郎?」

塾にもいない。

すると、カウンターに無造作に1枚のコピー用紙が置かれていた。
私は即座にその紙をつまみ上げた。

『今日は、深夜まで仕事で、もしかしたら、朝になるかもしれない。
塾長代理よろしく頼む!』


「……え?」
私は、そのメモを思いっきり握りしめ、様々な妄想にふけった。心臓のざわつき、全身の震えを押し殺しながら…

もしこのまま帰って来なかったら?
もし私を嫌いになってしまったなら?
もし私が仕事でも必要でなくなったら?
もし私が翔太郎を闇に突き落としたなら?
もし一生会えなくなったら?
もし…もし……


私の体中が悲しみと辛さと不安と孤独で爆発しそうになる。

ごめんなさい…

あ、電話、電話でもいい、謝りたい。
声が聞きたい。
私は翔太郎の低くてちょっと渋いそんな声が好きだった。


私はカウンターのデスクにある電話から、翔太郎の電話にかけた。

プルプルプルプルプルプル

プルプルプルプルプルプル

出ない。


私だとわかってて出ない?
そうなの、翔太郎?