20時過ぎても、生徒は来ない。やっぱ、さっきの平野くんかな…

「美園先生、20時から空いたから、事務作業頼むわー」
そう言って、塾長はパソコンで、生徒の一覧表を出した。

「同じ中学、学年、受講している教科、受講しているコマ数、月謝の入金記録、全部別々に、一目見てわかる表を作成してくれ」


そんなこともまだ十分に出来てなかったのか、そりゃ、1人では限界あるよね?


「はい、見やすいように工夫してみます!」


「よろしく」
塾長は次の授業に入っていった。


私はパソコンとにらめっこを開始した。

えぇーっと、現在の生徒数は、31人(男19人
、女12人)。
なんだ、結構生徒いるじゃん。これだけの生徒を全部1人で見てたんだ…大変だったに違いない。


実は細かい作業が得意な私は、あっという間に頼まれた業務をこなした。

そして、唯一気になったこと、気づいたこと……平野練…月謝が3ヶ月支払われていない……


塾長、もしかして気づいていない?

これだと、経理もきちんと出来てないかもなあ…

よし、許可でたら、チェックさせてもらおう。
私は初日とは思えないほど、【樋口学院】にどっぷりつかって、テキパキ仕事をこなした。

なんだかとても楽しい。まるで初めて恋をした少女のせつないトキメキ、胸キュン、そんなワクワク感で私は満たされた。


私は、塾長のとこまで行き、指で2階を指しながらアイコンタクトをした。