「翔太郎、行ってらっしゃい」
私はいつものように見送る。
空港まで行くのはやめた。
日常でなくなるから。


それに、それに、きっと泣いちゃうから。
行かないでって言っちゃいそうだから。


私は、日本に残って会社を守らなければいけないから。
翔太郎と私は、たくさんの社員と家族を守らなければいけないから。


私は、これ以上ないくらい飛びっきりの笑顔を見せた。

翔太郎は、これ以上ないくらい飛びっきりの野心を見せた。




「行ってきます」




翔太郎は、私に大きな背中で挨拶するかのようにゆっくりと出かけて行った。