「あのね、美園ちゃん、実は渡したいものがあって…」

穂乃香さんは、グッと全身に力を込めて、精一杯に話し始めた。


「これなんだけどね」
穂乃香さんは、鞄から、白い封筒を取り出した。


ん?
手紙?


「これ、翔ちゃんのお母さんから、ずっとずっと預かってたの」

「えぇ?翔太郎のお母さん?」
私は、度肝を抜かれた。


「翔ちゃんが、本当に好きになった人に渡して下さいって………亡くなった前日夜に、お母さんが私に持って来たの。もちろん、翔ちゃんは知らない…」


私は言葉が出なかった。

穂乃香さんは、淡々と話し続けた。

「手紙の中身は私は知らない。でも、もしかしたら、亡くなった真実が何かわかるかもしれない……翔ちゃんが、心に決めた人、心から愛する人は、あなた、美園ちゃんよ。だから、この手紙、受け取って下さい」


手紙…

もう一通の手紙…


「翔ちゃんに、見せるかどうかは、美園ちゃんが判断してね」

穂乃香さんは、落ち着きを取り戻し、ゆっくりと柔らかな穏やかな笑顔を見せた。



「わかりました。受け取ります。ありがとうございます」


私は深く深く頭が机にぶつかるくらい頭を下げた。