「あのね、美園ちゃん………私、昨日、振られちゃった」


「……え?」

何があったの?
どうしたの?


「私、昨日ディナー来るって思い込んでた。勘違いしてたの……時間になっても来ないから、電話したら………」


「穂乃香さん……」


「今日は、クリスマスイブだから、美園と過ごすんだって、言われちゃった…」

1粒の涙が色白な頬に眩しく垂れていく。


「それで、私、言っちゃったの。翔ちゃん、私達、やり直そうよって。あの時に戻ろうよって。私は、翔ちゃんがやっぱり大好きって……」

反対側の頬にも、美しく線がつき始めた。


「翔ちゃん、言ってたよ。
俺は美園だけを愛してる。
穂乃香は幼馴染、先輩に過ぎない。」



「…」



う、嬉しかった。
でも、目の前で泣いている穂乃香さんの前では決して素直に喜べない。


穂乃香さんは、大きく深呼吸した。

「ごめんね。あっち座ろうか?」
机と椅子の方を指さした。


「は、はい」
私達は、立ち上がり、そっと席についた。

「ご、ごめんね。化粧取れちゃってるね」
まだ寒いからか、顔は青白い。
表情は、とても切なそう。
いつもの香水の匂いも無かった。


「大丈夫です。穂乃香さんは、いつも綺麗です」


「私なんて…もうダメダメ」
穂乃香さんは、全身で、否定した。