「乾杯」
私達は、グラスを合わせた。
「遅くなってごめん」
「いいよ。今は、翔太郎ここにいるもん」
私はこれ以上ないくらいの笑みをこぼす。
「今日、新しく取引しようとしてる会社の社長に急遽呼ばれて、こんな時間に…」
ん?
穂乃香さんは?
聞くべきか?
聞かないべきか?
私はかなり迷った。
ショックを受けるのは私。
「そうなんだ。夕食は何食べたの?」
「料亭だよ。魚が美味かったー今度、美園も一緒に行こう」
仕事の話も上手くいったようで、かなり満足気の翔太郎。
料亭?
穂乃香さんじゃない?
「あーあ、翔太郎、今日、穂乃香さんに会った?」
私は全身の勇気を振り絞って聞いてみた。
「ん?ディナー誘われたけど断った。なんで?」
ちょっと不可思議な様子を見せた。
「そっかぁ。私は昼間ランチしたの」
聞いてない……
「これ、美味いな。やっぱクリスマスはいいな」
まるで大きな子供が、シャンメリーを片手に喜んでいるかのようだ。
「うん、あー世界一美味しいケーキもあるからね」
「ありがとう、美園、立石のこと、ごめん」
私は首を横に振った。何度も何度も。
「あれ、翔太郎、その袋何?」
私は、翔太郎の背後に置かれた茶色い紙袋に目が止まった。
「ん?ああ、今日のお店の手土産だよ。なんだろな?」
翔太郎は、隠すように言った。
「赤ワインある?」
「うん、今持って来るね」
私は、ウキウキでカンガルーのように飛び跳ねながら、キッチンに向かった。
翔太郎は、疲れを取るかのように、美味しそうに、アルコールをたくさん取りだした。
「はい、もう1回、乾杯!」
翔太郎のテンションは、異常に高い。
良かった。
翔太郎、帰ってきてくれて。
嬉しそうにしてくれて。
さあ、次はサプライズだ!



