甘く抱いて、そしてキスして…【完】




「翔ちゃん、そろそろ私に返して」


何度も何度も除夜の鐘のように私の頭に鳴り響く。


仕事が、なかなか進まない。
早く終わりたい。
早くゆっくりしたい。



「真田先生、明日からの冬期講習は、もう準備万端だよね?足りないものとかなんかある?」

ないよねー
完璧だもんね。


何だかじっとしていられなくて聞いてみた。
あーどうやったら、時間が早くすぎるんだろう?





小学生の生徒達が続々と入ってきた。

「こんにちは」

「みんな、こんにちは」
真田先生も続けて言った。


「真田先生、今日クリスマスイブだから、プレゼントある?」
1人の可愛い女の子が無邪気に聞いてきた。

「あははは、そうだな、頑張ったら、あるかもしれないぞ」
ニヤニヤと笑いかける真田先生。

「本当に?」
飛び上がって喜ぶ女の子。


私は不思議そうにその光景を眺めていた。





「真田先生、真田先生、なんかあるの?」


「あ、はい、少しですけど、お菓子の詰め合わせです」
と言いながら、赤と緑の可愛いリボンのついた小さな袋をたくさん私にこっそりと見せてくれた。


「真田先生、すごい!ありがとう!」

真田先生の粋な計らいに、濁った私の心が少し洗い流された。

「いくつある?足りそう?」


「大丈夫だと思います」


「了解」
私は、気持ちを切替えつつ、何とか仕事をこなしていった。