ランチを終えて、再び車に乗り込んだ。
なんだかんだ穂乃香さんは、ずっと話しかけてくれていたが、私は、全く耳に入ってこなかった。
聞き流し状態で、相槌だけを打つ。
私のせいなのか、気づいたら、穂乃香さんは、無言になっていた。
何だか異様な空気感。
逃げ出したい、そんな空間。
ようやく塾が見えて来た時、
穂乃香さんが、
「美園ちゃん」
と私を呼んだ。
「はい?」
穂乃香さんは、また無言になり、バックをしながら、車をゆっくり停止した。
穂乃香さんは、大きく深呼吸した。
「あのね、美園ちゃん」
私は、身体中の臓器が震えてきた。
なんだろう?
「翔ちゃん、そろそろ私に返して」



