「ちょっと、立石先生にお願いしてくる」
私はスマホを左手に持ち、右手に鞄を持ちだした。
「美園、なんだ?どこ行くんだ?」
びっくりした表情を見せる翔太郎。
「え?ちょっと会ってくる。たまにはいいでしょ?」
イライラ度数は、頂点を超えた。
「こんな時間はやめろ。危ない。明日、俺から言うから」
翔太郎は、無性に焦っていた。
「私は行けないの?ダメなの?」
翔太郎が、悲しそうな顔をした。
「ご、ごめん。俺が悪い……でも、勝手だけど、わかってるけど、美園を行かせることは出来ない……」
何?
なんで?
翔太郎、嫉妬してくれるの?
「ダメな理由はなんなの?」
私は荒々しく聞いた。
「そんなのわからないのか?美園は、俺の女なんだ……他の奴と2人にはさせれない」
話は続いた。
「俺は独占欲が強い男だ。捕まえた宝は、何があっても離さない。仕事もプライベートもそこは同じだ。俺は…俺にはお前が必要なんだ。ここまで来れたのは、美園が支えてくれたからだ。本当に感謝してるし、これからも一緒に頑張りたいんだ」
「………」
私のイライラ度数は急降下していく。
「美園、わかってくれるか?」
「…………うん」
私は蚊の鳴くような声で答えた。
翔太郎が近付いてくる。
ま、待って。
待ってよ。
もう少し平常心に……
「美園、ごめんな。真田のことも、ありがとうな」
翔太郎は、私の髪を大きな両手で触り、綺麗に整えてくれた。
「美人が台無しだぞ。笑って」
その言葉についつい反応して、心の傷口に蓋をして、私は笑って見せた。
「ゆっくり風呂で暖まろう」



