「もう、心配したよ。あんたが王女ってなにその展開」

「ごめん、心配かけて。私も相当驚いたんだけどね」


眉を下げて笑うメアリにエマも同じような表情を浮かべて笑った。

それを横で見守っていたユリウスが「メアリ王女」と声をかける。


「私は席を外します」

「え?」


共に食事をするつもりでいたメアリが瞬きを繰り返すと、ユリウスは目を優しく細めた。


「ご友人との時間が私からの誕生日プレゼントです」


柔らかな声で告げられた素敵なプレゼントにメアリは苦しくなるほど胸を感動で震わせる。


「ユリウス……」

「どうぞ、お楽しみください。後ほど迎えに参ります」

「はい。ありがとうございます」


深々と頭を下げると、ユリウスはメアリとエマを残し店を出ていった。


「さすがユリウス様ね。あたしが零した言葉を覚えてたんだわ」

「え?」

「この前、お勤め中のユリウス様にメアリのことを尋ねたの。そうしたら、あんたが王女だってこっそり教えてくれて」

「そうだったんだね。驚いたでしょ?」

「めちゃくちゃ驚いたよ。けどユリウス様が嘘なんてつくわけないし、とにかく心配で、メアリに会うことはできませんか? ってお願いしたんだ」


けれど、その時ユリウスは『申し訳ありません』と、簡単には会えないことを告げたらしい。

でも、覚えていて、今回のタイミングで連れてきてくれた。

そういうことなのだろうと、メアリはユリウスの心配りに深い感謝の念を抱く。


「さあ、ユリウス様のお気遣いを無駄にしないように語るわよメアリ!」

「賛成!」


笑顔で答えると、二人は向かい合って腰を下ろした。