「何かあったんですか?」

「いいえ。ただ、今夜は葬儀の為に人が多く集まっています。故に、不測の事態に備え、各隊が交代で警備にあたってるんです」


なるほどとメアリは相槌をうった。

離れた町から馬車を走らせこの首都に訪れた参列者は、今夜、城内の客室に宿泊することになっている。

ほとんどが各町の領主や貴族たちで、それぞれの私兵も連れてきている為にその人数は相当なものだ。

兵たちは王の門より外にある兵舎に滞在してもらう手筈ではあるが、中には血気盛んな者もいる為、ごくたまにだが兵士同士で衝突することもある。

それを諫めるのに、最高権力者直属の近衛騎士が介入するのはかなり効果があることだった。


「それより、メアリ王女。騎士に様はつけないよう、今朝イアン侯爵殿にも注意されていたはずですが」

「あっ」


しまったと言わんばかりの大きな口を開けたメアリに、ルーカスは声を出して笑う。


「まあ、なかなか慣れないよな。今まで培ったものがあるんだ」

「ルーカス殿、敬語を」


いつものメアリについつられ、以前の喋り方になったルーカスをユリウスが注意した。