(父様、私はあなたの娘としての道を選びました。きっと父様から見たら頼りないと思うけど、どうか、私に訪れる最後の時まで見守っていてください)


想いを込めて祈る。

親子としての思い出は最後の時だけだったが、看取ることができたのは幸いだったのかもしれないと、メアリは眠る父の顔を見て思う。

そして、自分は気付かずとも、父メイナードが愛情をかけてくれたことはメアリにしっかりと伝わっていた。


(できなかった親孝行を、これからたくさんしますね)


父がしてくれたこと、母が残してくれたもの。

それらを大事にこの国を、生きる人々を守っていく。

誓い、メアリは「父様」と声を零した。

静けさに包まれた礼拝堂に父の返事が聴こえてくることはなく、それでもメアリは今一度「父様」と呼ぶ。

最後に願った父の願いを、娘として。

次第に涙ぐむメアリの声を扉越しに聞いていたユリウスは物憂げに視線を足元へと落とす。


「……ごめん」


音になり損ねた謝罪は、誰の耳に届くこともなく、風に攫われた。