確かにヴラフォス帝国のやり方は強引で恐ろしい。

何より王の死がその非道さを物語っている。

メアリは段々と近づく礼拝堂を見つめ歩きながら父の死の間際を思い出し、喉の奥がつかえるような感覚に襲われた。


(今は、泣いたらダメ)


ユリウスに心配をかけまいと、メアリは笑みを作る。

そして、「ありがとうございます、ユリウス様」と礼を述べると、ユリウスはまた振り返り、先ほどと同じような戸惑いの表情を見せた。


「私のことはどうぞ呼び捨てで」

「い、いえ! それは恐れ多いです」

「あなたは王女様。恐縮などなさらず」


距離感のある言葉遣いに、メアリはまたしても王の事を思い出す。

堅苦しい挨拶はいらないと、気軽に接してくれと話していた父を。

自分が父の立場になり、ようやくその寂しさを身をもって知ったメアリは、ユリウスに願い出る。


「では、ユリウス様も今までのように接してくれませんか?」

「それはさすがに……」

「実は、少し苦しいんです」

「苦しい、ですか?」


僅かに首を傾げたユリウスに、メアリは小さく頷いた。


「いきなりガラリと景色が変わって、皆さんの対応も変わってしまって」