メアリは困り眉を寄せたが、オースティンは王を逃がす為にユリウスと共に殿を務めたことを思い出す。


「守っていただきました。王様の口から真実を聞けたのは騎士団長様が逃がしてくださったおかげです」


だからどうか頭を上げてと続けられ、オースティンはゆっくりと顔を見せた。

その表情には後悔が滲んでいて、メアリの胸が締め付けられる。


(イアン侯爵様も辛そうだった。騎士団長様も王様の……父様の友人。悔しいし、悲しいはず)


メアリもまた同じだった。

理解が追いつかないまま実の父を失い、二度と会えないこと、親子らしい思い出が何一つない悲しさ。

そして、父の死をしっかりと視ることができなかったことへの後悔。

痛みを抱えているのは自分だけではない。

皆、王を失って深い悲しみや後悔を抱えているのだと感じ、メアリは自分が今何をすべきなのかと考える。

この国は支えとする偉大な王を失った。

もしも自分が王位継承権を捨て、今までと変わらずにジョシュアの元で手伝いをしながら生きていくならば、別の誰かが代わりに王として立つのだろう。

だが、それでいいのか。

父が、母が願った幸せは何か。自分が望む未来とはどんなものか。

メアリの脳裏にふと浮かんだのは……。