ひとつは、ふたりの間に生まれてくる姫の予知能力を疎む者が幼い王女を暗殺するというものだった。

だから、メイナードの気持ちには応えられないと断るマリアに、メイナードは言った。

未来に何が起こるかわかっているのなら、先回りをすれば良いと。

王女が生まれてくる前に目ぼしい人物を見つけ出し、手が出せぬようにすればいいと。

マリアは悩んだ末、もうひとつの不幸を隠したままメイナードの強い想いと未来を変える決意を胸に結婚を了承した。

けれど──。


「王妃のお腹に君が宿り、順調に成長していく中、一向にそれらしい人物を絞ることはできなかった。怪しく思える者もいはしたが、決定的な証拠が出ることもなく、ついに君が生まれた」


それからすぐ王と王妃、そして王の信頼できる友人であるイアンとジョシュア、当時はまだ副団長だったオースティンを交え話し合いがなされ、両親の名を受け継いだメアリはジョシュアの元で育てられることが決まり、誘拐に見せかけ秘密裏に城から連れ出した。


「だが、すぐにジョシュアの元に赤子がいては怪しまれる。だから半年ほどフォンタナの修道院で働く俺の妹に預け、後に友人の子を預かるというていでジョシュアが迎えに行った」


フォンタナはアクアルーナ首都から見て北東、フォレスタット王国との国境近くにある大きな街だ。

治安も良く、むしろ修道院でそのまま成長を見守ることもできたのだとイアンは語った。